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<第4回高瀬賞>
◆受賞作
「夢の島」佐藤大船
売上げの降下するたび移転してつひに<夢の島>に辿り着きけり
頼むべくはただ己れのみ扉(ドア)開きて朝の電車に弾き出さるる
ぱそこんの前にみんなで真向ひてひかりの谷を彷徨ひてゐる
◆佳作(2篇)
「十二月の美術館」魚住めぐむ (抄)より
何もかも静止しているノヴェンバー落ち葉踏む音だけ残されて
シ♭心の奥に響かせて向かう十二月の美術館
いつもなら見えないはずの足跡が追いかけてくる雪の日の朝
「各駅停車」平林文枝 (抄)より
軋みつつ曲がる列車のそのままに疲れし者ら揺れて眠りぬ
犬の放尿待ちいるうちにクリーニング工場の灯りすとんと落ちぬ
特急列車の通過を待てばたちまちに川も棚田も駅も暮れたり
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<卓上噴水 115> (「短歌人」7月号)
「巴里へ」山科真白
和の国はさくらの遅き春なりき 旅の支度も遅れてゆきぬ
サムソナイトスーツケースをひろげたる畳の部屋にゆふぐれが来ぬ
雲のうへ快晴なりてまなうらにあをを映したままに眠りき