◆「竜宮の楽器」天野慶
ファーブルが虫を見ているときの目を想う 狂気はそのちょっと先
(裏庭に井戸があったら)掘る気力なくてスイスの水に潤う



◆「人体模型」内山晶太
目に蓋のある人体のかなしさを乗せしみじみと終電車ゆく
つややかに人体模型立ちており手触るる日々を秋のつめたさ



◆「nameless」生野檀
電磁波を吸う石いだくポケモンと目が合わぬよう電源入れる
日本に在るくるしさにことごとく白鳥の首黄ばみて居たり



◆「六月の雨」大石聡美
射抜かれるように別れたりあなたにも驟雨は降りぬ(……六月の雨)



◆「文化譜」森川有
ぬばたまの黒蜜とろりとうたらり器の淵に張りつめている
下手くそな長唄のように遠くから声が聞こえる「連絡事項は」



◆「女の勲章」冨田真朱
活動シテ、発動シテ、白血球(マクロファージ) 今日の敵は永遠じゃない



◆「アザース」保科かんな(投稿)
ねがわくばおとこシャラポワあらわれよ 十七歳の乳首立つ奴