漬物石に似たる平たき墓の前孫ら並びて小さき掌合はす  志田節子



さざ波が植田にたちて煌めいて白鷺の足ゆっくり動く  桂はいり



くず入れに今日の新聞捨てられていて九州の梅雨を伝える  森直幹



滾る湯に白玉団子しずしずと落とせばしずしず浮かびくるなり  水田まり



ゆけどゆけど出会ふものなき山間(やまあひ)の夜の信号に止められてをり  竹内タカミ



モネの光散り敷かれたる一枚をあきらめつかず順路を戻る  久保寛容



ジョンレノン博物館も温泉もあるのだ埼玉新都心には  平井節子



自販機に昭和を知らない若者らがジュース買い居り昭和のコインで  山田綾乃



指輪してレタス洗へば薬ゆびすこし後れて冷ゆる黄昏  近藤かすみ