「出かけます」一行ありてメモ用紙みかん一個の文鎮匂ふ  河内尚



束縛と自由のあはひふんはりと加湿器の湯気ふたりをつつむ  谷垣恵美子



海鳴りのきこえ来るよな寂しさを子の置きゆきし大人のぬりえ  山粼カツ子



とろろこんぶうどんをかるく啜るときも過ることあり緑いろの鸚鵡  村田耕司



ダイエーのロゴがまだ変わらずにいる なんで私の周りばっかり  根本つぐみ



尋ねても答へは出ない枯草のねむる上(へ)ゆつくり影法師ゆく  谷口方香(旧 谷口三好)



絵の中のわれは深夜のギャラリーに何を見ている描かれし目で  染谷美沙子



楽器所持許さるるかと福祉士に生活保護のレクチャーを受く  木戸真一郎



下流とはやがて大海に流れ出るたのしみありてゆらゆらゆかん  遊亀涼

 
 

                                                   (2007.1.21.記)