君が代」の低く漏れくる学校ゆ母川回帰の鮭の屍臭す


糠星がふたりの顔を仄照らしイエスとユダの密談つづく


わが歌に言霊ありや文字霊のありや泉鏡花(きやうくわ)の総ルビが沁む


曾祖父が神風特攻隊員でありし女中(メイド)もカフェにをるらむ


塞舌耳セイシェルの浜辺に握り睾丸(ぎんたま)で突つ立ちきのこ雲を見てゐる


泥河に零(こぼ)れながるる花びらに触れむと濡るる虎の鼻先  伊波虎英