改刻をしたる象牙に朱の肉はしみてわが名のしら紙に浮く


二ミリほどみじかくなりし印判の淡黄白色ゆびにつめたし


関西風うどんをすする姪つ子もちゆるちゆるちゆると齢(とし)経むあはれ


真菰刈るヨドバシカメラに鴃(もず)の舌さへづりやまぬ階を漂ふ


喧騒の刹那去る街、中世の写字生(しやじせい)が咳ばらひ降(ふ)りきて


はつ夏の空にヴィオロン響かせてバイオガソリン霊柩車去る


鼠、牛、虎、うさぎ、龍ぬけ出でてホスピス病棟からつぽの朝  伊波虎英