ちよろづの神去りゆかむ十月の緊急地震速報を俟(ま)


われらには空席にしか見えぬ椅子だれも座れず奥処にありぬ


あの世など信じぬけれどあの世など信じる人にわれは従ふ


三万を超ゆる自死者の突つ込んで突つ込んでゆけど崩れざるビル


禿(ち)び酷き硬貨のふちのギザ指でなぞれば聞ゆ嗄れ声が


冷奴を温(ぬる)やつこにして口中に国産大豆の味をふくらす


テレビジョンどれだけ薄くぺらぺらになれど表があらば裏あり  伊波虎英