台船が冬の日差しを載せてゆく川下に棲む暗き者らよ  田宮ちづ子



いまの吾に大好きがない大好きを忘れしままにうすくほほえむ  竹市さだこ



ふとみれば十三台のレジの人ことごとく簡易マスクつけゐる  野上佳図子



まじまじとパブロ・ピカソの顔見ればパブロ・ピカソの顔をしてゐる  西尾正美



名付けねば溺るるならむ星の海あふぎて古代の野に立ちたれば  服部文子



ひょるひょると巻き戻りゆく巻尺の内なる芯を見たことのなく  吉岡馨


             
                                                    (2009.3.9.記)