落葉踏む音も楽しき冬となりまづは足より幸せは来る  田中浩



ふうわりと落ちて来たのをぽんとつく紙風船が遠い日へ飛ぶ  森谷彰



太い指で傷にくすりを塗りつけてくれるみたいな電話だ、泣いた  谷村はるか



飴色のメタセコイアに陽は沈み今日を折りたたむ時が来ている  守谷茂泰



夕ぐれは朝よりありて夕方に近づくにつれはっきりとする  松木



生くることは殺すことなれば直刀は蕨手刀に進化遂げたり  洞口千恵



前を行く象の寂しさ後に従く象の哀しさサーカスの象  川口かよ子



一瞬のできごとなれど過ぎてすぐ思い当たりぬ しっぽがネズミ  小林登美子


             
                                                    (2009.3.10.記)