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妻も吾も健やかにして日常は忘却多し不都合あらず 関根忠幹
いちじくの木に芥川龍之介棲みついて葉越しに蒼き首筋の見ゆ 花鳥佰
すり切りし升にひと盛りおまけのせ砂糖売りしよ父の大き手 野村千惠子
変身ベルト腰に巻き付けへんしんに手間取る四歳を吾は立ちて待つ 下村由美子
患者さんにより良き治療がわが使命とテープの声は一音あがる 山本じゅんこ
馬鈴薯にトマトを接ぎて南瓜には茄子を接ぎ少し人間ギライ 林とく子
ベランダに濯ぎし物を日々干して一人すずしく男住みおり 御厨節子
女寄(めより)峠 香酔(かうずい)峠 山々は緑したたる五月をよろこぶ 矢野佳津
脚を庇ふアルミの杖はわたくしの腕もろともに張り詰めてをり 平居久仁子
お隣と醤油貸し借りせしころは髪を束ねし女多かり 楠田よはんな
旅に出ず終わる五月よ小鳥らが窓辺に来ては啄む光 守谷茂泰
(2009.9.10.記)