薄き和紙重ねるようにさよならを言わないままに遠くなる人  吉川真実



満ちては引くをんなと思ふ片意地に 助けになんか、勝手に来るな  平居久仁子



担がれしこともなければ担がれて来る神さんをあわれがるなり  西川才象



のりピーと呼ばれ思はず微笑みぬ警察署より歩み出でし時  田中浩



亡き父のカーディガン着るとりたてて思うことなしただ夜寒かな  久保寛容



人ら去りて大きくなりし車窓より溢るるばかり秋の松島湾  洞口千恵