■
我の声急にあかるし教室の窓より見える虹に気づきて 岩下静香
藤原さんの解説すばらしいとわが歌集評する便りに一寸複雑 宮田長洋
すでにして秋の星座となりし夜を鳥威し銃は不規則に撃つ 石川良一
頂きし柿の葉寿司の紅葉を机に並べ三日を経たり 中地俊夫
しりとりをしようと子が言ふ「さんぽ」からはじめてゐたる日曜のあさ 宇田川寛之
トリニダード「三位一体」而してトバゴは「たばこ」夕陽が赤い 小池光
ヤフーのテキスト翻訳「狂歌」とは「Comic tanka」といふが悲しい 吉岡生夫
尖頭のフォーク歩くとおもふまでスーパーモデルはわれにむかひ来(く) 紺野裕子
薄れゆく道標の字を読む真昼 物の影みな息をひそめぬ 守谷茂泰
実験用兎みたいに眠ろうよネットカフェ個室6時間パック 八木博信
座礁せし鯨のごとく伏せている僧の裾より香の匂い来 森澤真理
日常は忘れてゐたる庭石の雨降れば黒光りして来ぬ 西崎みどり
秋陽さす金物店の大鍋はアルミニウムの光をかえす 木曽陽子
たつたひとりの家族がいまし帰りきて車庫に車をぶつける音す 古川アヤ子
<主よ、主よ>と苦しいときにのみ唱へ吾が人生をなめてかかりぬ 水島和夫
カタカナでクスリと書くとたちまちに非合法なる響きひろがる 村田馨