なにがなし恐ろしかりき母の部屋の枕にのこる深きくぼみが  岩崎堯子



何もかもゼロの飲み物口にするいつもどこかをごまかしている  鳴瀬きら



どうしても僕に傾くシーソーの上に静かに初雪が降る  工藤足知



そういうところ少しわかるよ髪をなで早く大人になりなと思う  黒崎聡美



しじみ蝶は気ふれしやうに飛びめぐる自分の影と一つになるまで  荒垣章子



恐竜の化石を見つつ想像す恐竜を月は照らしいしかと  藤間明世