■
台風のちかづくといふまひる間の日傘しなるわしなるでしかし 勺禰子
曖昧に笑(ゑま)へるわれの目のはしに白くかがやく逃げ水のあり 関口博美
わが墓にする自然石を探さむと十年余ただ思ふのみにて 永井秀幸
海外ドラマは時折かなし背を丸めシリアル啜る大男見せ 砺波湊
すらすらと悪口をいふわたくしのその口の端の西瓜のにほひ 川井怜子
電話してもだあれもでない月曜日バゲットにあく気泡も食べる 荒井孝子
髪の毛を掴まれて泣きまた頬を寄せあふ子らは許す生きもの 河村奈美江
夕暮れて庭に摘みたる紫蘇の香が指にとどまる時の間涼し 永田きよ子
大らかに揺れる蓮葉を思わせてゆったり話す隣家の人は 奥田良子
逆光に窓の汚れの浮きゐるを見つつ聞きをり友の嘆きを 菊池尚子