熊蝉はくろがねの刃(じん)シャシャシャンと愚かしき日を切りきざみをり


熱帯夜しづのをだまきくりかへし九月になれど猛暑日七日


われよりも水分多きペットボトルはわれより多く汗をかきをり


足首にまつはる糸は赤からずアシダカグモとめぐり逢ひたり


月下(つきした)に仲秋なれば所在不明老人たちはひかりを浴びる


こめかみが痛くなるほど甘たるきおはぎを彼岸の胃にをさめたり


金本知憲(かねもと)の打球にひと伸びなきさまの秋深まればいよいよさみし  伊波虎英