◆ 継続あるのみ  伊波虎英  


 「短歌人」に歌が載るようになってこの号で八十四回目、ちょ
うど七年になった。欠詠しないことと共に、


  歌といへばみそひともじのみじかければたれもつくれどおのが歌つくれ  土岐善麿『空を仰ぐ』


「おのが歌」を詠うことを常に念頭に置いてきた……つもりだ。
 歌を詠むのが楽しくてたまらない時期はすでに遠く過ぎ去り、


  作歌は反省なり嘆息なり捻出なり苦悶なり結局さびし  加藤克巳『エスプリの花』 


空しさを感じることもある。それでもなぜかまだ詠い続けている。
作歌とは、畢竟つらく孤独な営みだが、毎月届く「短歌人」の同
人・会員皆さんの作品が僕を励まし奮い立たせてくれる存在であ
るのは間違いない。真摯な態度で作歌を続けていれば、


  あはれなるわがみじか歌ときどきはさかあがりせむ素志のなすまま  坂井修一『望楼の春』


というような僥倖に恵まれることもあるだろう。それを期待して
とりあえず八年目に向けて詠い続けていきたい。


 ただ、あまりにしかつめらしい姿勢も良くないかもしれない。


  わが歌は手暗目暗(てぐらまぐら)で進まうと酔ひつつ思ひ寝ねつつ思ふ  高野公彦『天平の水煙』


 これは素面の時は常に真剣に歌に向きあっているからこその吐
露なのだろうけれど、高野さんのようなベテラン歌人でさえ「手
暗目暗で進まう」と思う時があるというのは、僕のようなペエペ
エには気休めになるし、「とにかく詠め」と背中を押してくれる。


 とにかく詠い続けよう。継続、継続、継続あるのみだ。


  詩が書けぬほどに弱るな詩が書けぬほどに弾むなこのいのちひとつ  安立スハル『安立スハル全歌集』