ソーテーガイ、ソーテーガーイ  伊波虎英


かさぶたのごとく桜の咲き継ぎてこの島ぐにの傷よ癒えませ


石垣と堀を備へしいにしへの城の怯えを知らぬ原子力発電所(げんぱつ)


四十年あたためし卵ひび割れてソーテーガイ、ソーテーガーイと鳴き声がする


もろもろの不安兆せり精神のわが海辺にも原発ありて


黒き酢を毎日飲めり十字架の上で麻痺せし彼をおもひて


テレビから流れてきたる懐かしき歌はみなわがレクイエムなり


風雲(かぜくも)のごとく離れよ無神経になんでもかでも呟くひとよ


岩沼のうたびとの無事知りし夜に原稿用紙となるマグノリア