前に不か後ろに福かぼんやりとあなたの名にある幸を見つめる  工藤足知



鍋の柄がグラつき出して手元から何かが揺らぐ十八年目  中野順子



鴻毛のやうな情報もてあそびひらりひらりとうごく指先  伊東一如



レモン二個夜のテーブルに寄り添いて互の光浴びて輝く  北山有子



世の中も空も曇れる六月に子は晴れ晴れと花嫁になる  伊東民子



西空に茜色の雲広がりてわれらは生きる蟻のごとくに  齊藤壽子



七月の海へと続く道の端の牛乳瓶にしおれたる花  太田賢士朗


                                                    (2012.1.19.記)