『惜別』に太宰治が描きたる仙台のまちは池のごとしも  中井守恵



計画的避難区域浪江町にピーピーと線量計が哭く 嫌だと  大森益雄



母たちは lemming(たびねずみ)となり墜ちゆくや子らのためにと被ばくを避けて  黒田英雄



日本はひとつと皆がいふけれどいはきの自動車(くるま)タイヤ刺される  大橋弘



にがうりがペニスのようにぶらさがる役所に税をおさめに行けり  有朋さやか



とおくより悲観するとき夜の底の花火の在処ひかりていたり  内山晶太



つくづくと言葉の無力を思ひ知るさあれ知るまで深く惟(おも)ひき  蒔田さくら子



かへらざる安寧の世に歌ひけるくさぐさ恋ひつつ歌集を閉ぢぬ  蒔田さくら子



                                                              (2012.1.24.記)