不意に降るきつねの雨はやさしくて母に似た手を頭上にかざす  今井ゆきこ



母とわれ小さき諍ひせしのちに出来あがりたる今宵の夕餉  山田政代



ヒトの足年取りゆけばさぼるのでときどき一本足で立たせる  西尾正美



世界から拒絶をされているような気がしてすこし前髪を切る  渡口航



何ひとつ解決はないごまかしてまたごまかして世界は狂う  吉原俊幸



飛びまわる霊になりたい服すべて脱ぎすててなお脱ぎたい夜に  木嶋章夫



運動会終わった後の寂しさのカーブ描いた白線の先  暎泉


                                                             (2012.2.6.記)