◆『歌がたみ』 今野寿美著


 江戸千家茶道会の月刊誌「孤峰」に、二〇
〇七年七月号から二〇一一年三月号まで連載
された四十五回分の文章をまとめた一冊。帯
文には「和歌に秘められた仕掛けと美感を平
易に説き明かした入門的エッセイ集」とある。


 たとえば、『古今集』の「あひにあひて物
思ふころのわが袖に宿る月さへ濡るる顔なる」
という伊勢の歌。「あひにあひて」は、「逢
ふ」かそれとも「合ふ」か、またどこにかか
るのかをさまざまな観点から考察し、小気味
よく一首を読み説いてゆく。


 古典和歌を歌詠みとして勉強しておかなけ
ればと思いながらなかなか手を付けられない
でいる人や、歌作に行き詰まっていて現代短
歌や近代短歌だけでなく古典和歌からも何か
学び取りたいと考えている人にはうってつけ
の一冊だ。何も律儀に初めから順番に読んで
いく必要はない。巻末に歌集別の引用歌一覧
があるので、まずは自分の知っている歌をさ
がして読むのもいいし、しらべに惹かれる歌
を見つけてそこから読むのもいいだろう。



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                                伊波虎英