2013-01-02 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 いちぢんの風 伊波虎英 今もまだ阪神電車に揺られゐむすこし疲れて岡八朗は 注ぎたる水にグラスはぐらつきぬ胡麻ひと粒のもぐりこみゐて みどり濃き菠薐草につぶしつつ胡麻をふらせし母のおゆびは 海原のかなたに生れて海原のはるかに果つるいちぢんの風 風船が連れ去りてゆくわたくしの子どもではない誰かの子ども 風船の浮力にふとも慄きて子は握りたる手をひろげきる 事故死、自死、老衰死はた失踪のありて風船の一生波乱 明日にも揺れだしさうでコスモスの咲くカレンダー切り捨てがたし