DIES IRAE (7)  伊波虎英


黒日傘さしてゐるかのやうにゆく顔みな暗き日本の男


古書店に歌集ひらけば付箋あり「言葉が多い」とのみ記されて


網の目をまとふキリンの舌黒く脱走未遂兵のごと伸ぶ


軍場(いくさば)を入り乱れては嘶ける馬に滲める汗、梅雨湿り


天国の扉にあらず「神」の字の誤謬のごとく「押」とあれども


「神」の字の誤謬のごとき「押」の向かう薄汚れたる便器がならぶ


開いてはまたすぐ閉まる遮断機の棒(バー)が触れえぬ暮れなづむ空


わが部屋の火災報知機いつの日か神のごとくに語り出すらむ