2013-08-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 DIES IRAE (7) 伊波虎英 黒日傘さしてゐるかのやうにゆく顔みな暗き日本の男 古書店に歌集ひらけば付箋あり「言葉が多い」とのみ記されて 網の目をまとふキリンの舌黒く脱走未遂兵のごと伸ぶ 軍場(いくさば)を入り乱れては嘶ける馬に滲める汗、梅雨湿り 天国の扉にあらず「神」の字の誤謬のごとく「押」とあれども 「神」の字の誤謬のごとき「押」の向かう薄汚れたる便器がならぶ 開いてはまたすぐ閉まる遮断機の棒(バー)が触れえぬ暮れなづむ空 わが部屋の火災報知機いつの日か神のごとくに語り出すらむ