八月のうた  伊波虎英


ペットボトルふふむ少女は指さきに可憐な花を咲かせてゐたり


八月に生まれし母子に母だけが知る夏ありぬ二十二度(たび)の


「栄光の男」の歌詞のある箇所が心にひびき深く落ち込む


唖蝉のやうに黙してスマートフォン撫でる少女の熱き血潮よ  


南無大師遍照金剛(求愛の盛んなる蝉)お経終はりぬ


小学校の同級生の名のやうにふと思ひ出す北原佐和子


防御率良くても勝ちに恵まれぬスタンリッジに心寄せたり


寝ぐるしき夜に首ふる扇風機の自己矛盾めく発熱と風