折々のうた  伊波虎英


大盛りのパスタをもみぢ山となすトマトソースをたつぷりかけて


ホームドラマの流行らぬ今を独り身のわれは癒さるホームドラマ


やがて散るために染まりし紅葉かとおもへば侘し美魔女といふは


テロップに父とおなじき名の端役見つけて母はわれに告げたり


早起きの老人たちがひき逃げにあふ災ひのたびたびありぬ


ふにやふにやの麩に染みこんだ液体が口にあふれて味噌汁になる


二十手もあらば必ず整ひしルービックキューブのごとき一生


カラオケに採点されて満ち足りてゐる人が詠む歌ばかりなり