冬へつまぐる  伊波虎英


立冬が近づきたれば身に沁みるうどんのつゆが恋しくなれり


芝海老のふりしたバナメイエビ達が待合せするホテルのロビー


柔らかさ求めるはてに牛脂注入加工肉へと至りしわれら


人間を遂にやめたる人間が街をさまよふ猿のすがたで


なによりも香りが優先、洗剤も柔軟剤も香りを競ふ


いにしへに神はうまれき人間の涙ときつき体臭のなか


うそ臭く匂ふ衣服をなびかせる乙女は神に疎まれてをり


タッチパネルに神の指紋のまぎれゐて拭へばわれのひと日終はりぬ