新年のうた  伊波虎英


去年今年貫く棒の錆びたるを感じながらに新年迎ふ


せめてもの慰めなるか新年は暗き夜から常にはじまる


三キロのダンベルを手に三時間あまりを立ちて過ぐる新年


ペットボトルに去年だれかが汲みくれし天然水を新年に飲む


元日の朝もラジオは発しをり浜村淳のいつもの声を


百円と消費税で買ひし手袋ゆ五円分ほど毛くづ出でたり


「ご飯やで」と起こしてくるる母の居て幸せさうなドラマの家族


シングルマザーとなりたる人の覚悟といふタトゥーをわれは自傷と思ふ