年末のうた  伊波虎英


冷蔵庫ひらけば明く照らされる賞味期限の日付の過去が


細胞を噓で真つ赤に光らせて理研を去りし小保方晴子


薩摩切子の赤いグラスが心臓に埋まつてゐさうな微笑みだつた


老人は明るい未来へ突つ走る高速道を逆方向に


寒天で固めるためのコーヒーに白い砂糖をたつぷり溶かす


ぬばたまのコーヒーゼリーは漆黒にあまき砂糖の白をかくせり


お地蔵さんの頭をなでるやうに拭く蛍光灯のかさの丸みを


あたらしき年は暮れまたパーラーが新装開店するごとく明く