如月の空  伊波虎英


やり場なき怒りのごとし靴ひもはほどけて朝の道を撲ちたり


道ばたでスニーカーのひも結ぶ背にシリアにつづく如月の空


惑はずに来るあすあさつてしあさつて人は惑ひて靴底減らす


久々に板チョコ食べむと手にとれば余りの薄さに哀しくなりぬ


ホームへとつづく短き階段に老母のやうにスロープは添ふ


まれまれに天気予報にあらはるる雪だるま愛(は)しまれまれなれば


握つては開く両手の冬なればじつくり浸かる湯船ににぎる


また朝は来ると信じていざ眠らむ眼鏡のレンズきれいに拭きて