猫と回覧板  伊波虎英


野良猫の変死を告げて霜月の家をめぐれり回覧板は


ふたたびをふたつに閉づる回覧板死後硬直の冷たさをもつ


頭(つむり)なき鴉ただよふ池の面(も)の浮寝の鳥のごとき日常


野の鳥に吹矢を射りて満たさるる心の洞(うろ)の嵩をおもひぬ


自殺未遂を報じられたる猫顔の女優に南瓜色のゆふべを


飼ふならば犬か猫かと長き夜にひとりつれづれおもふは楽し


もし猫を飼ふなら蛭子能収のやうなる猫をわれは飼ひたし


ドローンが飛ぶ空の下、本心は神さまだけに言ふことにする