あらたまの年  伊波虎英


去勢され町に放たれたる猫のさびしく鳴けるあらたまの年


野原など何処にもなくて野良猫と呼ばるるものは町をうろつく


野原など何処にもなくて野良犬と呼ばるるものは町から消えた


あたりめで出汁をとりたるわが家の雑煮のもとは岡山にあり


青春は神の不在の祭りかな耳をすませば鳴る笛太鼓


ぜんざいは神在(じんざい)なれば白玉を神の吐息とおもひて食みぬ


賽の目の3(産)の向かうに4(死)のありて神の遊(すさ)びに転がるまでよ