◆ 【 メ ル 短 】 し ま し ょ 。


 僕とメールで短歌の交換をしませんか。
 あなたの1首をメールで送ってください。
 僕からあなたへも自作をメールします。
 メールのやりとりは無期限・無制限です。


 六月十九日、自サイト内の掲示板に、「【メル短】しましょ。」というタイ
トルでこのように始まる告知をした(二十日に改訂版を再度書き込む)。同日
付のウェブ日記にも同様の告知文を書き込んだ。前夜ふと思いついたことを自
分のサイトだけでこっそりと即実行に移してみたのだ。【メル短】というのは、
メールという〈閉じられた場〉での一対一でのやりとりなので、お互いの信頼
関係なくして成立しない。そのため、告知の際にはできるだけ事細かに約束事
項(相手の作品は絶対にどこにも公表しないとか、文法上の誤りや気になった
点の指摘はいいけれど、具体的な改作案の提示は相手からの希望がある場合を
のぞいては控えるとか)を提示したのだが、参加者が集まるかどうかについて
は正直自信がなかった。なぜこのような企画を思いついたのか少し述べてみた
い。


 インターネット内には、たとえ結社に所属していなくても、また身近に短歌
を詠んでいる友人・知人がいなくても、孤独な歌作生活に陥ることなく短歌を
詠む(読む)ことのできる環境が整っている。また、歌壇を取り巻く最新の状
況を知ることも可能だ。「電脳短歌イエローページ」にアクセスすれば、多く
の(ほんとうに多くの)仲間がそこにいることを知るだろう。それぞれのサイ
トを覗くだけでなく、掲示板やメールによる双方向のやりとりが可能な場合も
多い。また、「原人の海図」「梨の実歌会」といったネット歌会も盛んだ。
春日井建氏主幹の短歌結社「中部短歌会」では、インターネット上にサイバー
支部
を設け、結社外の人も自由に参加することができるサイバー歌会を開催し
ている。ほかにも、メール短歌誌『ちゃばしら』には誰でも参加可能であるし、
「題詠マラソン2003」といった新しい試みも生まれている。こうしたイン
ターネット上の環境に、結社に所属せず知人・友人にも短歌を嗜む者のいない
私は大いに満足している。インターネットがなければ、これほどまでに短歌に
のめり込むことはなかっただろうとさえ感じている。


 ただ、ネット歌会は期間が限られていることもあって、参加したにもかかわ
らず時間的にコメントする余裕がなかったり、一時的に短歌に拒絶反応を起こ
していてコメントにあまり参加できなかったりする場合がある。そういった時、
参加者にはもちろん、主宰者や幹事の方へ申し訳ないという思いが残ってしま
う。また、ROM(Read Only Member)の方を意識して結構疲れることもある
ので、もう少しリラックスして歌を詠める(読める)場があればなあと以前か
ら思っていたのだ。それに、「未発表・既発表」というインターネット上にお
ける作品発表の取り扱いの問題についても、メールで個人的にやりとりをする
なら問題はないわけだし、未発表作品のストックもできる。クローズドの掲示
板を探して、特定のメンバーで期限を設けない意見交換会を主催しようかとも
考えたのだが、足立尚彦氏が開いている「レ・モグラ歌会」や、「原人の海図」
内の「100首詠・短日興行歌会」(出詠者以外でも参加可能だった正選・逆
選コメントを中心にした批評会)などクローズドの掲示板を利用したものは前
例があるので、どうせなら新しい試みにチャレンジしてみようと考えたのだ。


 企画倒れになるかと心配していたのだけれど、告知後まもなくメールで短歌
が届き、現在五名の方とやりとりをおこなっている。私のほうでは、相手のこ
とは公表しないという約束なので詳しいことは言えないが、今まで名前は知っ
ていても直接会話を交わしたことのなかった方をはじめ五名とはいえ幅広いメ
ンバーだ。既に多い方とは四回ずつメールを交換している。


 今後、歌会のように題や時間に縛られることなく自由に自分の思いを歌にし、
また未発表作品のままお互いに感想を述べあうことのできるこの【メル短】と
いう〈閉じられた場〉を、短歌賞への応募をはじめとするさまざまな〈開かれ
た場〉への作品発表の前段階として有効な場にしていくことができればと思っ
ている。


 やりとりは無期限・無制限ですので、もうやめたいと思っても
 「やめます宣言」は不要です。寂しくなるので宣言はしないでください(笑)。
 こっそり【メル短】をストップしてくださればOKです。
 なお、僕の方からストップすることはありません。


 告知の中には、このような約束事項も含まれている。気負うことなくのんび
り気長に続けていきましょうということだ。


                       (「ちゃばしら」2003年7月号掲載)