煩悩をながく吐ききし右よりの旋毛のあたり髪うすれたり  染宮千鶴子



ロダン彫る「考える人」凛々しかり吾細ぼそと「考える葦」  杉山みよ子



夜の橋にひとり立ち止まり眠らない水の流れをふと怖れけり  守谷茂泰



褐色のナチ党制服映しつつうぬぼれ孔雀のごときヒトラー  田中浩



諍ひて二日程遠い星にゐる夫を覗きに階段上る  高崎愼佐子



サーカスのライオンいやな表情す人間だったことがあるよな  青木和子



不参加料二千円なる公民館修復奉仕作業に参加す  織田梨花



プラチナの結婚指輪(マリッジリング)が馴染むころ手指の荒れは諦むるべし  清水繭



おのが事にかまける日々に読点を打たるるごとき母の入院  杉山春代



本当のことが言えない人がいる上手に嘘をつく人もいる  村田馨



地獄でも極楽でもよしどちらにも先行せし友あまたあるゆえ  大岡拓也




                                                    (2006.12.26.記)