◆受賞作
「明るい部屋」佐々木通代
みづからを罰するごとく排泄臭ただよふ午後の病棟にをり
いくそたび転倒しても杖を欲る杖さへあれば歩けると母は
われら四人で置き去りにした一メートルの排尿管に母をつなげて
パイナップル抱へるほどにとげとげの姉の言葉がわたしに刺さる
急流を揉まれ揉まれしのちの凪にゆふべたゆたふ母は笹舟
絵手紙の枇杷が涙にみえぬやう鬱金たつぷり筆にふくます
飛び散りしサルビアの紅鴨川よりこちらばかりに雹は降りたり
さみどりのほんによく鳴る草の笛忘れ草とは知らずふふみき
絶望の縁をゆけとは誰がことば白壁を押す蝿をみてゐつ