求人のチラシ広告手に重く老われらにも来る日曜日  村田馨



道連れを考えていたあの頃と変わらずバンザイして子は眠る  大橋麻衣子



曇天の下で眺める掌の傷より蔓が伸びて宙吊り  大橋麻衣子



塩零せば七年不幸つづくとふイタリアの諺 ゆで卵むく  有沢螢



十三本目の地下鉄を掘る東京で思ってもいない夕張を言う  谷村はるか



植物の息してねむるとひとのいうあなたはゆめに歌作りいん  小林登美子



新しき上司かこれが一〇ミリに足らぬ眉間を更に顰めて  高橋浩二



紅白を家族三人が別々に見られるテレビがわが家にはある  石川武



朗読者のセーターばかり見てをりぬ客席でなぜかゐたたまれずに  高澤志帆



身の裡に白き花々飼うごとし我を知る死者年ごとに増え  森澤真理



つけられた値段の順に太りたる自然薯ならばわれはいかほど  杉山春代



夜の帳降りた電車の硝子窓に人は運命を映しては去る  守谷茂泰




                                                (2007.6.10.記)