嵐山光三郎を読み終えてゆるり口髭伸びた心地す 山本照子
唐突に新鮮な若者食べたしと食欲湧きぬ陽炎もえて 大畑敏子
水中のひかりにただよう藻のごとし太極拳を舞える老い人 越田慶子
おひとりでさみしいでしょうといわるればストンとすなおにさみしかりけり 朝生風子
本物と説明されし猫目石信じて捨てつ葬儀の帰り 小島すぎ子
千円を返してくださいあの千円に私の人生がかかっています 花森こま
呆けしごとき母とたたかひ日は暮れて敗者のごとく病室を出る 小野さよ子
逃げて行けぬ木に番号をふる人の寂しき背中に夏暮るるなり 中村良男
近江とは逢う身ならんと誰(た)が言いし 花いちもんめあなたが欲しい 有馬美佐子