幸田露伴喜寿の祝ひに招かれし茂吉の礼状一階に無く


によつぽりと黒々なれる鬼貫の句の一行がわがまへに立つ


芥川、露伴漱石それぞれの色紙の文字のしづまりを過ぐ


われのみが部屋に居てみる四つ折の筋目のこれる用箋二葉


用箋の罫を無視せし文字ぴたり罫の赤きに嵌るもありぬ


われ容れてしばし無人でなくなりし部屋を無人にして出で来、亦(また) 


素龍筆柿衞本『おくのほそ道』のゑはがき等を求め立ち去る  伊波虎英