木香薔薇かきねにあふれははそはの母はねぶりをひたすらねぶる 佐々木通代
牛のにほひ沁むゆふばえの道尽きて太平洋はここにはじまる 金沢早苗
「佐渡郷土かるた有ります」謎のごと貼られてゐたる一軒の家 小池光
ひそやかに逢魔が時は降りてくる団地23号棟の壁づたいに 今井千草
猫の子のすりよるごとき風はきて梅雨の晴れ間のまあ眠いこと 高田流子
外からの風にゆつくり廻りゐる換気扇見ゆ会議のあはひ 吉浦玲子
てづくりは少し重たし牛乳のパックから今日作りしはがき 岩下静香
救いへの誘いに見えて俺は行く残夜に灯る電話ボックス 八木博信