梅雨明けのまぢかき午(ひる)に<ごく自然なる愛はむづかし>の歌くちを出づ
              糞をする犬をつつめる陽のやうなごく自然なる愛はむづかし 小島ゆかり


金平糖ばりばり砕く織田信長(のぶなが)の奥歯のやうに白き夏雲


Baedeker(ベデカー)の表紙のごとき夕映えにわが旅ごころ撫でられてゐつ


夏の宵、天(そら)小林多喜二(たきじ)の死面雲もの哀しらにしろく浮かべり


画布持たぬ子らが絵具をしぼり出すパレットのごとき電網世界(インターネット) 


東京のおバカは男前(をッとこまへ)やなとTV見てゐる大阪のアホ


たんたんと九百数十名の名を列(つら)ねし『詩人臨終大全』  伊波虎英