福田首相辞任会見に休止となる『嫌われ松子の一生』の哀れ  秋山夕子



リノリウムの廊下を過ぎるスリッパの足音も間延びする昼下がり  平林文枝



天変と思へるほどの音たてて雷(らい)はおのれの光にほろぶ  岡田幸



喜多方の<切腹美少年>の菓子店主飯豊の山に転落死せり  助川とし子



唄ひゐてかくんと入れ歯のはづれしを見てゐたけれど猫は笑はぬ  林とく子



「運転者板鼻利夫」と名を掲ぐトラックに従きなにやらたのし  竹浦道子



回想の終わりは何処か焦げておりただ夕立を待つ夏の暮れ  守谷茂泰



     広島市民球場の秋
さようなら市民球場 台本を読むように胸はつぶやくのだが  谷村はるか



釘を打つためにバナナを凍らせるやうな徒労がつづくこのごろ  洞口千恵



平和祈念式典の裏、ジャパネットたかたが叫ぶ「二十万円!!」  松木