秋の日の言葉はさびし出づるうた出づるうたみな過ぎゆきのこと


仏壇の林檎ほのかに香る真夜、矢じりのごとく鼻梁尖りき


きんもくせい甘く香れば思ほゆる学習雑誌の綴込み付録


蜜柑の絵、爪でこすれば匂ひ来し甘き人為の香をいまも恋ふ


ワタクシハ存在セヌと風は告げたたずむわれの頰を撫でたり


山折り線、谷折り線の襞なせる秋のこころの糊しろ何処(いづこ)


わが体(たい)は紅葉(もみぢ)しはじむ万願寺唐辛子嚙みくだく甘みに  伊波虎英