霜月のあしたに思ふはかなごと打ち消すごとく集塵車くる  渋谷知子



あふられて楓葉あまた落下せり一斉送信されたるやうに  洲淵智子



コスモスが咲いているから眼をとめる 親のない子を哀れむように  竹田正史



野の花の種子よりちさき脳(なづき)もち稚魚らは淡き色ひらめかす  松野欣幸



伸び易きガーゼハンカチ畳みても四隅合はねばそのまま仕舞ふ  河村奈美江



めぐすりはじいんと滲みて テーブルの二つの林檎抒情しはじむ  川井怜子



「ここ切れば死んぢやいますね」と物騒な言葉連ねて囲碁の解説  荘司竹彦



なにもせず過ごしておれど腹は減りなぜか靴底までが磨り減る  森直幹