天理教の塀に大根干されてた宗教も人間のためというように  森谷彰



てのひらの金継ぎありし伊万里猪口 継がれし事に心傾く  楠田よはんな



若草の妻夫木聡の名に凭りて忘れ続ける一人の名まえ  古本史子



雑木林抜け来たるときわが踏みし枯葉の音は空に帰りぬ  守谷茂泰



ラベルなき壜の漣ゆらめかし錬金術に思ひ馳せゐる  大倉佳彦



水溜り日溜り子溜りその脇でうわさ話をする母溜り  大橋麻衣子



メンヘル女かメルヘン女か知らねどもそういうもので我はあるらし  生野檀



3キロも人轢きしゆえ車にも罪あるごとしトヨタイプサム  津和歌子



バイク便飛ばせばいいと簡単に言うのだ誰も誰かを使い  谷村はるか



福音のごとく聴きおり歓びを虔ましく言う人のかたえに  石井庄太郎



まつとうな歯の減りゆくはまつとうなこころ喪ふ過程に似たり  洞口千恵



普通とはいちばん遅いもののこと普通列車に普通郵便  松木