ひろげたる花壇図面の四つ角に鬱金(うつこんかう)の球根を置く


ふかき夜にさびしく鳴くは猫ならず み冬の贄に埋めし球根


猫のごとまだあたたかき湯湯婆(ゆたんぽ)はふとんから出てこたつに入りぬ


聖誕祭前夜(イヴのよ)のおほきカップにあたたかき牛の乳満つ甘みを増して


唇にまとはりつける乳膜は母の右目の濁りやも 吸ふ


ポリタンク提げし翁が白き息吐きつつ路地へひとり消えゆく


丸き餅ひとつ沈めてすきとほる雑煮の汁はわが母の味  伊波虎英