2009-03-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 ひろげたる花壇図面の四つ角に鬱金香(うつこんかう)の球根を置く ふかき夜にさびしく鳴くは猫ならず み冬の贄に埋めし球根 猫のごとまだあたたかき湯湯婆(ゆたんぽ)はふとんから出てこたつに入りぬ 聖誕祭前夜(イヴのよ)のおほきカップにあたたかき牛の乳満つ甘みを増して 唇にまとはりつける乳膜は母の右目の濁りやも 吸ふ ポリタンク提げし翁が白き息吐きつつ路地へひとり消えゆく 丸き餅ひとつ沈めてすきとほる雑煮の汁はわが母の味 伊波虎英