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思ひつくままにあれこれ書きゆけば世界はすべて白と黒なり 薄葉茂
世にそむき嵐をねがうこともなく男の鼻の年月の艶 今井つとむ
来年の暦をややに高く吊る善きことあれと祈る思いに 伊藤直子
ダイエットに効なきバナナひと房は吊るされており夜の卓上に 堀口澄子
十人を診れば十人それぞれに老いは異形の乳房を下げる 松岡建造
湯たんぽを足から腹へ移すとき羊水のごと湯はたゆたえり 山本照子
古き本開いてみればみな父が日付記しぬ子に買いし日の 立原みどり
この師走クリスマス色に彩られほんまにうれしいんか?通天閣 勺禰子
足に指十本あって火星まで行くには今日は寒い大阪 花森こま
死んじまへと呪ひすぐさま思ひなほす「足の小指をぶつけますやうに」 吉岡馨
七十二万円の残高は引き出せば一万円札が七十二枚 渡口航