三歳のからだが騒がし抱きやれば熊野の海の潮騒ひびく  鶴田伊津



ガラス戸があくと酒巻酒店の紙の門松ともにあきたり  佐々木通代



日本のいなかの寺の本堂にくつしたのやぶれわれ見てをりつ  小池光



いつの世のどの宰相の夢なるか美しき国そのなれの果て  藤原龍一郎



紙臭き自販機コーヒー舐めながら流言蜚語の「ひ」あたりを聞く  森澤真理



駅といへ馬は来たらず馬面のいくたりは来ていななきかはす  榊原敦子



干し上げし物たたみゆくぬくとさよ喜びとして一日を終る  永嶺榮子