頭頂に賞味期限の貼られある寂しい卵をいつつ睡らす  佐和美子



思いきり蛇口をしめた音をさせ笑いはじめる松坂慶子  砺波湊



点燈夫という役のみに来てディケンズのページに瓦斯の灯をともしゆく  久保寛容



マネキンの小学生は大空へ希望の双手差し出してをり  斎藤寛



床の隅しづみて昏しかの世への入り口ならむ紫きやべつ  高島藍



寺町一の二の「さんか歯科」間違えて私の奥歯を抜いた  岡頌子