眼のごとく老ゆる硝子戸ゆるやかなゆがみの中に生家の庭見ゆ  吉川真実



石段をブーツでのぼる彼岸の日かかとに春の重力が響る  洞口千恵



泣きたいと思って泣ける歳は過ぎ発疹これがわたしの涙  大橋麻衣子



己が眼窩とおる小魚にふるさとの春を語るや大和のどくろ  上原元



進化系パチンコというフレーズが画面に消えてまた現るる  竹脇敬一郎



<お会計>よりも大きく<CASHIER>と掲げる店に甘藍を買う  若尾美智子



暗闇の中に灯れる蝋燭に乙女の指は透きとほりたり  正藤義文



真白なノートを開き眠るとき水平線は我に歩み来  守谷茂泰



高瀬基金というものありて高瀬賞もそれで運営されていると知る  生野檀



検索でひとまず少し知ってみる深く知るため電源を切る  松木