■
眼のごとく老ゆる硝子戸ゆるやかなゆがみの中に生家の庭見ゆ 吉川真実
石段をブーツでのぼる彼岸の日かかとに春の重力が響る 洞口千恵
泣きたいと思って泣ける歳は過ぎ発疹これがわたしの涙 大橋麻衣子
己が眼窩とおる小魚にふるさとの春を語るや大和のどくろ 上原元
進化系パチンコというフレーズが画面に消えてまた現るる 竹脇敬一郎
<お会計>よりも大きく<CASHIER>と掲げる店に甘藍を買う 若尾美智子
暗闇の中に灯れる蝋燭に乙女の指は透きとほりたり 正藤義文
真白なノートを開き眠るとき水平線は我に歩み来 守谷茂泰
高瀬基金というものありて高瀬賞もそれで運営されていると知る 生野檀
検索でひとまず少し知ってみる深く知るため電源を切る 松木秀