吾はさぞやいい顔だろう好きなことしか行わぬ六畳間では  高山雪恵



水よりも静かな耳を持ち歩く青葉の光降り注ぐなか  守谷茂泰



子供の日、母の日、われの誕生日 五月だんだんうとましくなる  洞口千恵



踏ん張りのきかない日には泣き声を赤子にまかせ涙だけ出す  猪幸絵



泥人形が泥へと還るよろこびを思ひて眠る春の深きを  西橋美保



遠くいて幸せを祈りたいけれどあなたにとって幸せはなに  谷村はるか



文房具屋を巡ってもない・ない・ない・原稿用紙がダイソーにある  生野檀



由貴子有希子ゆきこという音(おん)さみしくてどこへもゆくなたったひとりで  生野檀



整然と刈り込まれたる生垣のようにあなたはいつも正しい  古本史子



京の町上ガル下ガルの初つばめ匂天神・天使突抜  上原元



ゆうぐれの針を運べば藍染の布に生まれる麻の葉模様  平林文枝