<第8回高瀬賞>受賞作より抄出



「眠る山鳩」中井守恵


山鳩の鳴くこえがする 死後のことおもわず生きん生きている間は


下校する時刻に聞こえたにちにちの祖父のカラオケかなしい日にも


あまたのこと忘れしのちもわれの名を呼ぶとき祖父は寛大なりき


うつくしく整頓された祖父の部屋 草原のように寡黙となりぬ


「あのカーブ、また受けたい」と父が言う音たてて足の爪切りながら


山鳩の眠るすがたを思いおりグローブひとつしまいしのちに